“看板のないレストラン”

かつて住んでいたある街に”看板のないレストラン”があった

その前を通る度に何料理のレストランだろうと気になっていた

たまたまそのレストランの前を通ったときに、顎髭のシェフが仕込みをしていた

思い切って「ここは何料理のレストランですか?」と訊いてみた

そのシェフは「どこの国の料理というわけではありません。美味しく召し上がっていただく店です。気軽に来てください。ただし、見ての通り8席しかないので予約を入れてください。5,000円のコースと8,000円のコースがあります」

僕は今度の結婚記念日のために8,000円のコースで予約した

”看板のないレストラン”に連れて来られた妻は、こぎれいなオープンキッチンと寡黙な顎髭のシェフを見てすぐに笑顔になった

目の前で手際よく素材を切り、蒸し、炒め、焼き、揚げ、美しく盛りつけられて給された料理は、目にも、鼻にも、舌にも、お腹にも美味しいものだった

シェフは言葉少なに、全国からその日に取り寄せた旬の素材の説明をしてくれた
頭でも美味しいと感じた

結婚記念日に入った”看板のないレストラン”で真心のこもった美味しい料理をいただいた

僕の小さな”看板のないデザイン・オフィス”は真心のこもった木の住まいをつくりたいと思っている