昔住んでいた家の床が、パインでした。
そして当時、犬を飼っていました。
結果はご想像のとおり、床は爪痕だらけ。
でも不思議と憎めないんですよね、パインの床って。
節(ふし)だらけの素朴な木目に、傷さえ風景として馴染んでいく。
そんな思い出の木を、今回は実験台にします。
実験に使った材と条件
| 材 | 塗装 | 入手 |
|---|---|---|
| パイン(赤松)無垢フローリング | 天然植物オイルワックス(クランプオイル ハイソリッド) | 建材通販のサンプル材 |
名前は長いですが、要するに浸透型(材に染み込むタイプ)のオイルワックス仕上げです。
条件は全記事で共通(詳細はオークの実験記事)。
- しょうゆ・ケチャップを直径3cmほど垂らして30分放置。その後、乾いた布で拭き取り
- プラスドライバー(約60g)を30cmの高さから柄を下にして垂直に自由落下

しょうゆを30分放置した結果

これは意外な結果でした。
しょうゆもケチャップも、ほとんどシミが残りませんでした。
柔らかくて染みやすそうなイメージのパインで、この結果。
材そのものの力というより、オイルワックスの塗膜ならぬ「染み込みバリア」が効いたことが理由と考えられます。
無塗装のオークや檜がしっかりシミになったことを考えると、塗装の有無は樹種の差より大きいのかもしれません。
ただしオイルワックスは経年で抜けていくので、この防汚力はメンテナンス前提の数字だと思ってください。
ドライバーを30cmから落とした結果


こちらは順当に、少々の傷と凹みができました。
パインは軽くて柔らかい木(軽軟材)なので、ここは仕方のないところ。
うちの犬の爪痕だらけの床を思い出しても、パインに硬さを求めるのは酒屋で野菜を探すようなものです。
犬や猫と暮らす予定があるなら、パインの床は傷を「受け入れる」覚悟とセットです。硬さで選ぶならオーク(ナラ)をどうぞ。
パインの床は飴色に育つ
パインの新品は白っぽい黄色ですが、数年で蜜のような飴色に変わっていきます。
紫外線と酸化による自然な変化で、パイン好きはこれを「育てる」と呼びます。
注意点がひとつ。
家具やラグを置きっぱなしにすると、そこだけ日焼けせず色ムラになります。
模様替えのとき、ソファの下から新品色の四角形が現れる。パインの家の定番イベントです。
気になる人は、ときどき家具の位置をずらすか、いっそ全体が焼けるまでの過程ごと楽しんでください。
パインという木について
強度を求める木ではない代わりに、パインには良さがあります。
まず、よく「しなる」こと。
曲げに粘るので、ひび割れや折れにはかえって強いんです。
加工しやすく、節の多い素朴な木目はカントリー系・ナチュラル系のインテリアと相性抜群。
アンティークのパイン家具が現役で流通していることからも、大切に使えば長持ちする木だと分かります。
注意点はふたつ。
膨張・収縮が大きく反りが出やすいこと。
そしてシロアリに好かれやすいこと。床材に使うなら、床下の防蟻(ぼうぎ)処理は専門業者に必ず頼んでください。
シロアリの話をもう少しだけ。
パインに限らず、木の家の大敵は床下の湿気と虫です。
防蟻処理には保証期間(一般に5年程度で再処理)があるので、中古住宅や築年数の経った家では「最後にいつ処理したか」を確認してください。
床下点検口を開けたことがない家は、床材を張り替えるタイミングが点検のチャンスでもあります。
手入れとメンテナンス
ワックスの色選びも楽しいポイントです。
クリア系なら経年の飴色をそのまま活かせますし、色付き(ジャコビアンなどの濃色)ならアンティーク風に振れます。
目立たない場所で試し塗りしてから全体に、が鉄則です。
定期的なワックス(ブライワックスなど)の塗布と、ブラシがけが基本です。
木目に沿って、優しく擦るように。
ゴシゴシやると柔らかいパインには傷が入ります。本末転倒です。
どんな家・部屋に向くか
傷を味と思える人の、リビングや子供部屋。
経年変化で飴色に育っていく様子は、パインの一番の見どころです。
部屋ごとの判定はこうなります。
| 部屋 | パイン床の判定 | 理由 |
|---|---|---|
| キッチン | △ オイルワックス必須 | 実験ではシミを完封。ただし凹みは覚悟 |
| ダイニング | △ 同上 | 椅子の脚にはフェルトを |
| リビング | ○ 向いている | 傷が味になる代表的な場所 |
| 子供部屋 | ○ 向いている | 多少の傷は成長記録と思えるなら |
| 寝室 | ◎ 好相性 | リスクが少なく香りも楽しめる |
ピカピカの床を保ちたい人には向きません。その場合はウレタン塗装のカバ桜やウォールナット複合が候補になります。
塗装の種類でどれだけ結果が変わるかは無塗装・オイル・ウレタンの比較記事にまとめています。


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